家族じゃなくなった日。
企画書の説明は藤田さんが全てしてくれた。
私がした事と言えば空になった藤田さんのカバンの荷物持ちくらい。
あとは、説明中にジロジロ藤田さんを見てくる女性社員の目線を、微笑んで殺すくらい。
今私イライラしてる。
自分でも分かるくらいに。
「今日の話ちゃんと聞いてたか?」
急に話しかけられる。
少し前で歩いて私に歩幅を合わせようとはしない。
「…わかってますよ。明日は3時から今吉様と再度話し合いをして、それから企画書を仕上げて谷口さんに提出します。…その為の準備は明日の7時に会社に来て私が終わらせておきます。それから、先ほど話されていた新しいプロジェクトの方は確か藤田さんが先に谷口さんに貰ったものと、後で私が貰ったもので少し違う点がありましたのでそこを少し調整しないといけないと思います。」
私は考えていた事をいい終わり、真っ直ぐ見ていた視線を少しずらして藤田さんの方を見る。
すると彼は少し口を開けて驚いた顔していた。
「…それ全部頭で覚えてんのかよ。」
「い、一度読んだだけなので正確とは言えませんが、大体は、覚えてます。」
何か悪い事でもしただろうか、、。
「お前、面白いな…。」
「…えっ⁇」
プイッと前を向いてまた歩き出す彼に私は必死で追いつこうとしたが、何故だか今さっきよりゆっくりになった。
よく見れば藤田さんの歩幅が小さくなっている。
少しは認めてくれたって事なんだろうか?
とりあえず、私は右斜め後ろあたりで私に合わせてくれているその歩幅に合わせて歩く。
あんなに晴れて暑かったのに、夕方になっても暑さは変わらない。
沈みゆく太陽が風を呼び、
雲を吹き飛ばし暗闇を呼び、
今日も星が見えるといいな。
ーーなんて呑気な事を考えてみる。