家族じゃなくなった日。
「それにしても、山本さんなんでこの会社に来たの?自己紹介聞いてたけど前は、北海道にすんでたんだよね?」
「はい。理由って理由じゃないんですけど…、まぁ、なんと言いますと、憧れの人がいまして……。」
少し照れくさい。
実の父を憧れの人と誰かに話したのは初めてだし、口に出したのも初めてだから。
「何何?恋話⁇僕そういうの好きだよ〜!話聞くよ⁇」
立花さんはすっかり私の話に釘付け。
「違いますって!恋とかじゃないですよ!」
「じゃあ、憧れの人って誰なんですか⁇」
彼はとても興味津々だ。
目をキラキラ輝かしてずいずい聞いてくる。
私は小さい声で言った。
「しゃ、社長ですよ!」
私は恥ずかしさのあまり顔を隠した。
はたから見れば可笑しな人なのはわかっている。けど、隠さなかったらきっと私の顔は真っ赤なんだ。
「社長⁉︎ 山本さんって社長に会ったことあるの⁉︎」
どう答えよう…。
実の父です。
なんて言えない!!!
「し、新聞とか、ほほほ本とか、まぁ、そういうので知ったかなー…なんて、。
「へーー。」
ーーあ、危なかった。
こんな事バレたら絶対ヤバイに決まってる!
「あれ…もしかして、優香お嬢さま?」
ピタ。
全神経が固まる。
冷や汗だ。
冷や汗がでる。
まさか、こんなところで会うなんて。
いや、合うに決まっている。
父の会社だ。
1人や2人、私の事を覚えていても変ではない。
もとはこの会社の社長令嬢なのだから。
私は笑顔で挨拶をする。
「お久しぶりです、横山さん。」
隣では口を開けたまま閉じれていない立花さん。
いったい、どうしたものか…。