家族じゃなくなった日。
横山さんの後ろには5人ほどの連れがいた。
この会社の建ち上げ当時から父に使えていた人だ。
私なんて、7歳の頃からお世話になっているんだ。
忘れていないに決まっている。
「ちょ、山本さん!どうして横山さんの事知ってんの?横山さんって言ったらこの会社で3番目くらいに偉い人で…て言うか、お嬢様って⁉︎」
ようやく我に帰った立花さんが戸惑っている。
廊下ですれ違ったものの、周りの人がみんなこちらに注目している。
「横山さん、お時間宜しければお久しぶりにお話しでもしませんか?」
「もちろんです!美味しいお店を紹介しますよ!」
立花さんには手を合わせて謝罪した。
後でお詫びの品を渡すつもりだ。
立花さんは何か言いたげだったけど、何も言わずいてくれた。
「あっ、立花さん!」
クルっと振り向いた彼の耳もとで言う。
「くれぐれも内密に。後で説明しますから。」
そう言うと、片手で丸を作り一礼して立ち去った。
横山さんも後ろについていた人たちを帰らせ仕事を任せた。
「さて、とりあえずこの状況を説明してほしいんですけどね?お嬢さま?」
「その前に、お食事にしましょう?」
久しぶりだ。
こんなかしこまった喋り方は。