家族じゃなくなった日。
ーーバタン
黒のハイブリットカー。
見ただけで値段もなんとなく…。
座席には皮のシート。
いろんなところにお金が貼られているみたいだ。
「お嬢様、どちらに行かれますか?」
「そんな、敬語なんて使わないでくださいよ!昔はもっと普通だったじゃないですか!」
「はははっ!そりゃーお嬢様、貴方が悪ガキだったからですよ!」
「ふふっ、そうですね。横山さんにしたイタズラは今でも全て覚えていますよ。なんなら1から言いましょうか?」
「いやいや、遠慮してきますよ。惨めな気持ちになりますよ。それより、どこ行きます?」
「……なら、あそこにしましょう?ほら!昔、みんなで行ったでしょう?」
「了解ですっ!…じゃあ、行き先も決まったとこで……話しますか?」
私は言葉を返さない。
「なぜですか?なぜお嬢様がこちらにおられるのですか?社長はご存知なのですか?」
「質問攻めですね…。」
ふふっと笑う。
横山さんは笑わない。
小さなため息をつく。
バレないように。
「それじゃあ、話しましょうか。私がここに来た理由を。」