家族じゃなくなった日。
会社に戻ると今度は立花さんに質問攻めされた。
横山さんとの関係は、私が幼い頃からの“父の友人”だと話した。
そして、小さい頃にお姫様ごっこでお嬢様と呼んでもらっていてそれ以来そう呼ばれていると話した。
横山さんが社長以外に敬語を使ってるところ初めて見たよと言われた。
そりゃー私、それの娘だし。
ーーとは言わず、久しぶりに会って緊張していたんですよと笑って誤魔化した。
ーーープルルルルル…プルルルルル…ガチャ。
「もしもし、母さん?優香だよ。」
「あらぁ、どうだった仕事場は。」
「いい感じだよ!」
優しそうなおばちゃんに、
綺麗好きの上司、
少しいい噂を聞かない教育係に、
まだあった事のないダンボール三段重ねの向かいの人。
みんな個性があって、お話するのが楽しそうだ。
「明日は今日食べれなかった食堂に行って日替わりメニューを食べるんだー!」
「そうなの。楽しそうでよかったわ。お母さんもこっちで頑張るから、あんたもがんばんなさいね。」
「うん。ありがとう、おやすみなさい!」
「おやすみ。」
ーーガチャ。
私の通っている会社は黒川株式会社。
…と、母の中ではなっている。
本当はAMANOcompanyで、父の会社で働いていることは母には秘密だ。