君のウソに涙のキス
美咲の席の前で立ち止まると、「おい」と声をかけた。
「今、忙しいの、あとにして」
美咲は、文を、高速で書き写して、顔を見る暇なんてないようだ。
「おい、美咲貸せよ、それ」
柊ちゃんは、負けじとそう言うと、美咲が、ガバッと顔を上げた。
「はぁ? うっさいわ………ね」
勢いよく出した声は、だんだんと小さくなっていき、驚いてるのがわかる。
「……な、なんで柊がここにいんのよ」
「だーかーら、英語、当たんだよ」
「あー、そういうこと、ね。
でも、残念でした~っ、私が先だもんね」
美咲は、へへっと笑うと、また英語のノートを写し始める。
柊ちゃんは、その前にあった椅子にドカッと座ると、自分もノートに写し始めた。
「……なんで、あんたまで見てんのよ」
「妃莉にOK貰ったんだよ」
見ながらも、2人は喧嘩し始めるし…。
でも、その姿がなんか懐かしくて笑ってしまう。
「2人で仲良く見てね…!」
ニコッと笑ってそう言うと、2人はブツブツ言いながらも静かに写し始めた。