君のウソに涙のキス
教室に入ると、白石くんは、机に座っていた。
私は、その前に立つと、白石くんはジーッと私のことを見つめた。
「いや、特に用はないんだけどさ、
学校だと、あまり話せないじゃん?」
「あ……っ、そうですね…」
そう言ってから、私は、下を見た。
長いこと、沈黙が続き、白石くんがガタッと
机から降りた。
「じゃ、帰ろ」
そう言って、鞄を取ってきてくれて
わたしに渡してくれた。
2人で歩いて、昇降口で履き替えていると、
バタバタと走ってくる音が聞こえた。
「……あれ、妃莉?」
「あ、柊ちゃん」
私は、靴に履き替え、上履きを持ちながら、
柊ちゃんの方に顔を向ける。
すると、白石くんの顔を見て、
もう1回私のことを見た。
「あれ、なんで白石?」
「え……!? あ、えっとね…!」
「それ、話すと長くなる感じ?」
柊ちゃんは、首にかけてあるタオルで
顔を拭くと、チラっと私を見た。
「あ、うん……?」
まあ、長くなる、よね……。
「美咲、家に来んの?」
「あ、美咲?
あー、来るって言ってたよ」
「ふぅん…。じゃ、俺も行くわ
おばさんに伝えといて」
柊ちゃんは、そう言うと、階段を上がって行ってしまった。
上履きを持ったまんま、その場に立ち止まっていると、後ろでバンっと音がした。