君のウソに涙のキス
振り返ると、白石くんが、入れて
私の方をクルリ、と向いていた。
「……あ、ごめんね…っ」
そう言って、私もしまって歩き出す。
白石くんは、また駅まで送ってくれると
「じゃあ…」と言って歩き出してしまう。
私も改札に向かおうとすると、
グイッと手首を掴まれた。
え……?
戻って来た白石くんに、驚いて目を見開いていると、さらに驚くことを言ってきた。
「妃莉、って呼んでもいい?」
「え……?」
驚きすぎて、固まっていると、白石くんが私の顔を覗き込んだ。
「いい、すか?」
うわ、なんだろう
白石くんに名前を呼ばれてみたい。
そんなふうに思ってしまう。
白石くんは、すごい人で、人気で
かっこよくて、モテモテで……。
そんな人と期間限定、だけど付き合っていて
それだけでもすごいのに…。
「あ、ぜひ……っ」
私は、そう言って、ニコッと微笑んだ。