クラウディアへようこそ
「この眼を見ても、まだ思い出さないのか?」
言われるがままに眼を覗き込むと同時に、私はハッと息を呑んだ。
黒色のカラーコンタクトレンズの奥に隠されていた瞳が、金色に輝いていたからだ。
一色社長のプロフィールに外国の血が流れているような記述はなかった……と思う。
たとえ、外国の血が流れていたとしても金色の瞳を持つ者がいるのだろうか。
……見てはいけないものを見てしまった。
胸を占めるのは未知の物への恐怖か。
それとも、ぞっとするような美しさに対する羨望か。
「あなたは一体……」
何者なのか……?
尋ね終えるより先に一色社長が静かに口を開く。
「俺の昔の名前は、“レオンハルト・シュライツ・クラウディア”」
……私はこの時初めてクラウディアという社名の本当の意味を知った。
「……お前の前世の夫だ」
そして、これから先自分を待ち受ける運命の重さに眩暈がしそうになったのだった。