クラウディアへようこそ
(もう、だ……め……)
覚悟を決め、ぎゅっと目を瞑ったその時である。
パタパタと足音が近づいてきたかと思うと、応接室の扉が勢い良く開いた。
「社長!!ストップ!!ストップです!!」
応接室に飛び込んできた男性は、私達を発見するや否や強引に間に割って入った。
「賀来、邪魔すんなよ!!」
「いいえ。邪魔させて頂きます。あなたはともかく彼女には説明が必要です」
賀来と呼ばれた男性は必死になって、殺気立つ一色社長をなだめ始めた。
(助かった……の……?)
私はペタンとその場に膝をついて崩れ落ちてしまった。緊張が解けてすっかり力が抜けてしまったのだ。
「大丈夫ですか?」
労わりの台詞と共に女性のほっそりした手が差し伸べられる。
応接室までやって来たのは、どうやら先ほどの賀来という男性だけではなかったらしい。
「すみません……。ありがとうございます」
お礼を言って手を借りると、女性はにっこりと微笑んだ。
突然襲い掛かって来たどこぞの誰かさんと違って、いたってまともで感じの良さそうな人である。
それは、賀来という男性も同じだった。