クラウディアへようこそ
「良かったですよ、間に合って……。危うくあなたを犯罪者にするところでした」
蹴り倒されたテーブルとあらぬ方向を向いているソファを見て、応接室に駆け込んできた二人組はここで何があったのか大方の想像がついたらしい。
互いに顔を見合わせ、盛大なため息をつく。
「あなたという人は!!“何も”覚えていない彼女に襲い掛かるなんて……!!」
「ガミガミうるせーな!!本当に覚えてないとは思わなかったんだよ」
一色社長は不貞腐れたかと思うと、呆れたことに今度は開き直り始めた。
「野蛮……」
「夏八木、お前まで怒るな。余計ややこしくなるだろうが」
このほっそりとした身体のどこにそんな力が湧いてくるのだろう。
夏八木と呼ばれた女性は私のリクルートバッグを床から拾い上げ埃をはたくと、一色社長を氷の眼差しで睨みつけた。
「何十年も探していた女がようやく見つかった。多少はしゃいでも仕方ないだろ?」
一色社長は軽蔑の眼差しなどものともせず、いけしゃあしゃあとのたまう。