クラウディアへようこそ
(レ……オ……!!)
一際強く念じたその時だった。
灰色一色だった地面がぱあっと黄金に輝きだしたのだ。
生きとし生けるものが持つ命の輝き、それはさながら光の絨毯のようであった。
「助けてくれるのね……」
私の問いかけに呼応するように、光の絨毯が波打つ。
(ありがとう……)
ささやきの森は私の願いを聞き入れてくれたのだ。
温かな光は森全体に広がり、周りの景色が徐々に霞んでいく。
光に取り込まれ次第に遠のいていく意識の中で、最愛の彼の台詞が浮かんでは消えていった。
“必ず帰ってくる”
“来世でも俺の妻はお前だけだ”
熱のこもった黄金の瞳を思い出すだけで、ぎゅっと胸が締め付けられた。
(また、出逢えるわよね……?)
ささやきの森と同化すれば、自分の命の灯火もやがて光のひとつとなり消えていくだろう。
でも、不思議と悲しくはない。
……目を瞑ればありありと思い出せるから。
“リリア様っ!!”
“王妃様”
“リリア……”
私を呼ぶ沢山の人の声がひとりきりとなってしまった旅立ちの行く末を明るく照らしてくれる。
なんて素晴らしい絆なのだろう。
クラウディアに嫁いだ私は決して間違っていなかった。
(神のご加護がありますように……)
愛する人達にそっと別れを告げると、まもなく永遠にも似た深い闇が訪れたのだった。