クラウディアへようこそ
(多少……?)
これが多少だと?
顔を合わせるなりいきなり襲い掛かって来て。
訳の分からないことを捲し立てられて。
……怖かった。
(本当に、怖かったんだから……)
ホッとしたせいなのか、怒りのせいなのか、はたまた興奮したせいなのか。
私は泣き声を堪えるように唇を噛みしめながらポロポロと涙を零して無言で訴えた。
「泣くなよ。悪かった。謝るから」
投げやりな謝罪の言葉は紙のように薄っぺらく感じた。
(大っ嫌い!!)
……間違っても許してなどやらない。
夏八木さんが泣き出した私をかばうように前に立ち塞がると、一色社長はとうとう観念した。
「あとは、頼む」
深いため息をついて身なりを整えると、私の横を通り過ぎ応接室から出て行こうとする。
「どこに行かれるつもりですか?」
賀来さんが呼び止めると、こちらをチラリと振り返る。
「俺が居ない方がお前らも都合が良いんだろ?目的は達したからな。戻って仕事してくる」
……そう言って遠ざかっていく足音が妙に悲しげに聞こえたのは、私の気のせいだったのだろうか。