クラウディアへようこそ

「少しは落ち着きました?」

「取り乱して……すいませんでした」

「驚くのも無理ないわ。悪いのは一色社長よ」

嵐の後のような惨状の応接室から会議室に場所を移した後も、夏八木さんはずっと私に付き添ってくれた。

気分が落ち着いてくると、急に気恥ずかしくなった。なにせ初対面で泣き顔まで見られてしまったわけである。

「さあ、何から話しましょうか」

賀来さんは女性陣のやり取りを微笑ましく眺めていたかと思うと、おもむろに話に始めた。

「まず初めに自己紹介しておきましょうか、私は副社長の賀来です。こちらは秘書の夏八木です」

「夏八木茉莉です。どうか茉莉とお呼びください」

「あ……。榊優里です」

「存じ上げております。この度は、弊社の採用試験に来ていただきありがとうございます。先ほどは弊社の一色が大変無礼な行動をとりましたことを心からお詫び申し上げます」

賀来さんと夏八木さんは腰を折り、丁寧なお辞儀をしてくれた。

社長にずけずけと物申しているくらいだから、役職付きの偉い人かと思っていたら案の定副社長である。

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