クラウディアへようこそ
その4:初出社
恋に恋する乙女ならば、誰しも一度くらいは妄想したことがあると思う。
売れっ子小説家に拾われて、ひとつ屋根の下で生活とか。
異世界にトリップして、麗しの王子様と冒険の旅とか。
旅先の温泉旅館の若旦那と、しっぽり湯けむり修業とか。
己のスペックは棚上げして相手が美化されているのは、独身彼氏募集中の寂しい女ということで許して欲しい。
現実は小説程都合の良くいかないのだから、夢くらい見たっていいじゃないか。
あえて、他人に指摘してもらわなくても十分自覚している。
目立った特技もなく、容姿は百人並み。どこにでもいる平凡な24歳。
そんな私に小説のようなラブロマンスが訪れるはずがない。
……そう。
今、置かれているこのトンチンカンな状況こそ、夢だ!!妄想の産物なのだ!!
ああ、もう!!何がどうしてこうなった!!
少なくとも私はこんな展開など望んでいなかったのに……。
神様とは時に優しく時に残酷なものである。