クラウディアへようこそ
(……おかしい!!絶対に間違っている!!)
何度も離して欲しいと訴えているにも関わらず、聞き分けのない子供のように益々意固地になって顔を近づけてくるのはそちらではないか。
私だってこんな不毛な争いをいつまでも繰り返したくはない。
逃げ回ったせいで折角整えてきた髪の毛はボサボサになるし、メイクだって剥がれて散々である。
「っ!!舐めんなっ!?」
「ひぃああああっ!!」
疲れの色が見え油断したところで、不意打ちを仕掛けられる。
身体を軽々と持ち上げられたかと思うと、壁際まで一目散に駆け出したのである。
「いやあああ!!」
落っことされる恐怖に負け、とっさに腕にしがみついたのがいけなかった。
そのまま背中を壁に押し付けられ、右手を拘束されてしまうと、とうとう逃げ場がなくなってしまった。
「ったく、手間取らせやがって……」
狙っていた獲物をようやく捕まえることができてご満悦なのか知らないが、嬉しそうに私の髪をクルクルと指で弄び、頬へ滑らせる。
(もうやだっ……)
そう声に出して非難したいのに、ヘビに睨まれたカエルのように身体が縮こまってしまう。
なぜ、こんな目に遭わなければならないのか。
まったく身に覚えはないのだか、応接室に来るまでの己の行動を振り返ってみたのだった。