クラウディアへようこそ

賀来副社長はそんな私の心境を察したのか、ひとつだけアドバイスをくれた。

「一色社長を信じてください」

……信じる?一体何を信じれば良いと言うのだ?

神妙な面持ちで首を傾げていると、賀来副社長は更に続けた。

「あなたはあなたの心のまま行動すれば良いのです。思ったこと感じたことをありのまま正直に述べてください。臆することはありません。それぐらいで、彼のあなたへの想いが揺らぐことはない。なにせ何十年と待ち望んでいた女性ですから」

(何十年って……)

一色社長は……存在するかも分からない、私をずっと想い続けていたってこと?

「私はね、キチンと手順を踏みさえすれば、あの方の邪魔をする気はないのです。全てあなたの心次第です。それとも、一色社長に男性としての魅力はありませんか?」

“一色社長の男前”ぶりを、暗に示されると、私だって弱い。

そりゃあ、一色社長は強引だし、口が悪いところもあるけれど、容姿とか経歴とかあらゆる意味で魅力的な男性ではあると思う……。

「……そういう言い方、ずるいと思います」

「なるほど。まんざらでもないということですね?」

クツクツと押し殺すように笑われるなど、もっての外である。

「もう……!!勘弁してください……」

あくまでも一般論を述べただけだと抗議しようとした、その時だった。

< 62 / 77 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop