クラウディアへようこそ
「だそうですよ。良かったですね、一色社長」
「賀来、余計な世話を焼くな」
私の背後から……まさかのご本人が登場したのである。
どうやら、私達が話をしていた反対側の入り口からやって来たらしい。
(うっそ!!聞かれてたのっ!?)
恥ずかしさと、気まずさが入り混じり、額から汗がダラダラと噴き出てくる。
ご登場のタイミングが悪いというか、なんというか……。
「これも側近の務めの内ですよ」
「嘘つけ。ただの好奇心の間違いだろう」
もう!!
なんて口の利き方をするのだろう。
賀来副社長にそんな口をきけるのは世界広しといえど、一色社長だけである。
「心配しなくても邪魔者はさっさと去りますよ。榊さん、ぜひ楽しんできてくださいね」
バチバチと飛んできた火花を避けるように、賀来副社長は颯爽と立ち去って行った。
「……待たせたな。出掛けるぞ」
「はい……」
私は背を向けて歩き出した一色社長の後を黙ってついて行くのだった。