【完】素直じゃないね。


「ということで! 俺、乃亜と回ってくるから、あとのふたりよろしくっ!」


「……へ? へっ……!?」


なに言ってんだ、このばか!と叫ぶ前に、宙くんは乃亜を連れて人混みに消えてしまった。


……ま、まじですか。

よりにもよって、残されたのが高嶺とって……。


横を見上げると、呆れた顔で宙くん達の消えていった方を見つめている高嶺。


「ったく、宙のやつ」


「あーあ、花火見たかったのに……」


乃亜も連れて行かれちゃったし、帰ろうかな……。

高嶺も、この状況じゃ帰りたいよね。


水ヨーヨーをポンポンとつきながら、しょんぼりうつむいたとき。


「見るんじゃねぇの?」


思いがけない言葉が降って来て、「え?」と聞き返すと、高嶺が首にかけていたお面をつけた。


「せっかく来たんだから、 花火見よ」


「高嶺……」

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