【完】素直じゃないね。


と、ふたりで歩きだしたはず。

なのに、しばらくして隣を見ると、高嶺の姿はなくて。


振り返ると、人混みにもまれているひょっとこの姿。


その光景はシュールすぎて、思わず笑いそうになるけど。

「ちょっと、大丈夫?」

駆け寄って、人混みから高嶺を救いだす。


「危ねぇ……どこかに流されていくかと思った……。
お面、前が見づらすぎる……」


よっぽど身の危険を感じたのか、珍しく焦りに染まった声を漏らす高嶺。


たしかに、この人混みの中、お面をつけて歩くのは相当難しいだろう。


ぐっと下唇を噛みしめ決意を固めたあたしは、微かに震える手を伸ばし、そして高嶺の手を握った。


「え?」


表情は見えないけど、こっちを見つめるようにして、ひょっとこが驚きを見せる。


「あ、あたしに掴まってなよ。
はぐれないよーに」


普通ならこの台詞を言うのは男女逆なんだけど、そんなこと言ってられない。

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