【完】素直じゃないね。


我に返り、急激に恥ずかしさが込み上げてくる。


「あっ、あたし、なんか食べる物買ってくる……!」


今すぐここから逃げだしたい……!

もうその一心で、高嶺の顔も見れずにその場から立ち去ろうとする。


だけどきっと、気持ちも体も焦っていたんだろう。

自分が下駄を履いていることも忘れて駆けだそうとしたせいで、下駄のつま先が石と石の間に引っかかって。


「うわ……っ」


足を取られ、バランスを失って前へ倒れていく体。


こ、転ぶーっ!


迫りくる衝撃を思い、反射的にぎゅうっと目をつぶる。


だけど。


………あれ? 痛くない?


体にぶつかるだろう痛みは、いつまでもやってこなかった。


だって、あたしの体は温かいなにかによって支えられていたから。

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