【完】素直じゃないね。
「高、」
高嶺に手を伸ばし名前を呼びかけた、その時。
「あっ、つかさちゃーんっ!」
「高嶺と日吉ちゃん、はっけーん!」
神社の正面の方から明るい声が聞こえたかと思うと、乃亜と宙くんが姿を現した。
あたしは慌てて伸ばしかけていた手を引っ込め高嶺と距離を置き、ふたりに向き合う。
「の、乃亜、宙くん」
わざと明るく振る舞うけど。
どうしよ、笑顔がうまく作れない。
日が没し薄暗くなってきていて、この暗さに助けられた。
「もう、電話してもふたりとも出ねぇんだもん。
めっちゃ捜しまくって心配したよなぁ、乃亜ー?」
「でも無事に合流できて良かった」
「ごめんね、宙、乃亜ちゃん。心配掛けちゃって。
でも、ちょうど良かった。
もうすぐ花火が打ち上げられる時間だよ」
硬い笑顔を作るあたしの横で、高嶺は何事もなかったかのように、プリンスの仮面を被っている。