【完】素直じゃないね。
やがて高嶺の言葉どおり、地鳴りを響かせて夜空に大輪が打ち上がった。
空を見上げ、嬉しそうにきゃっきゃと声を上げる乃亜と宙くん。
隣に立つ高嶺は……どんな顔をしているんだろう。
顔をそちらに向けられない。
近くに、すぐ隣にいるはずなのに、遠くて。
高嶺が踏み込むなと言っているのか、あたしが自分で踏み込むなと言っているのか。
どちらかは分からないけど、あたしは高嶺に踏み込めない。
打ち上がった花火を見ても、どこか夢を見ているような感覚で、花火が今目の前の空に描かれているという実感を得られない。
……でも、ただひとつ、たしかなことがある。
さっき、高嶺に抱きしめられた時、気づいてしまった。
あんなに男が嫌いだったのに、高嶺に抱きしめられたあたしの鼓動は、高鳴っていたということに。
──あたし、高嶺のことが好きだ。