【完】素直じゃないね。
それから重い荷物と格闘しながら、しばらく歩いたあたしは、一軒の大きな家の前で足を止めた。
「ここ、かな……?
黒い屋根に、グレーの外装、2階建て、高嶺の表札……」
宙くんに教えてもらった特徴をひとつひとつ声に出し、指を差して確認する。
間違いない、教えてもらったとおり。
「ここが、高嶺の家……」
綺麗な家だろうなとは思ってたけど、予想どおりモダンで綺麗な家だ。
あたしはドアの前にしゃがみこみ、ビニール袋をドアの前に置く。
気づいてもらえますように。
寒いし、食べ物が悪くなることはないだろうけど。
あえて、手紙や連絡を入れることはしない。
あたしだってことがバレない方がいいって思ったから。
まだ、高嶺に近づく勇気がない。