【完】素直じゃないね。
あのプリンスが?
いやいや、ありえないでしょ。
「それ、人違いとかじゃな……」
笑いながら否定していると、いつの間にか、あたしの上に影が落ちていた。
そして突然、自分の声が途切れたのを、この耳で聞いた。
続きを言おうにも、口が塞がれていた。
唇に当たる、柔らかい感触。
目を見開けば、視界いっぱいに映るのは綺麗な高嶺の顔。
高嶺はあたしの手を掴んだまま、もう片方の手であたしの顎を持ち上げていて。
は、あ、え?
あたし、キス……されてる?
高嶺に、今……。
数秒思考が停止して、状況を把握した途端。
体が一気に熱を持った。
……怒りで。