【完】素直じゃないね。
ミオリさんと数言やり取りをしていた高嶺は、不意に玄関前にあるビニール袋を見つけたようで、不思議そうにそれを持ち上げた。
「あれ? なにこれ。
ミオリ、知ってる?」
「ううん、知らない。
差し入れじゃないかな? 友達とか」
ビニール袋の中身を見ていた高嶺が、ふっと顔を綻ばせたのが、マスク越しでも分かった。
「隠してるんだろうけど、バレバレ」
「え?」
「俺に悪魔ののど飴なんて買って来るやつ、ひとりしか知らねぇわ」
ドクン、と心臓が揺れた。
高嶺が笑った……。
今、高嶺の心の中に、自分がいる。
そう思うと、胸の中でしゅわしゅわと炭酸が弾けるような感覚を覚えた。