【完】素直じゃないね。
あたしは桜庭先輩のペースに巻き込まれつつも答えた。
「ここ、掃除場所なので」
すると、桜庭先輩がきょとんと目を丸くする。
「あれ? 今日水曜だから、掃除なくない?」
「……あ」
指摘されて気づく。
毎週水曜は、掃除がないんだった。
「はは、うっかりだなぁ」
「う……」
普段なら、こんなばかなことしないのに。
高嶺のことばかり気にしてたせいだ、きっと。っていうか、絶対。
「じゃあ次の質問。
つっちゃんは、どうして男が苦手になっちゃったの?」
「小学生の頃、あることがきっかけで……」
「俺のことは怖い?」
「まだ信用ならないです」
「はは、正直〜。
でも俺、全然怖くないよ?
だってこんなとこで寝てるくらいだし」
おどける桜庭先輩に、あたしは思わず吹き出した。
「ふふ、たしかに」
変人、だろうけど、悪い人じゃない。
桜庭先輩の雰囲気は、丸いというかふんわりとしていて、居心地がいい。