【完】素直じゃないね。


やがて高嶺がゆっくりと顔を上げた。


その表情は、見ればわかるほど不機嫌オーラMAXで。


キラキラしていた瞳は、今はもう明かりを灯していない。

煩わしい虫ケラでも見るような目で、あたしを視界に捉えている。


高嶺が、再び口を開いた。


「お前さぁ、なんで騙されないわけ?」


「……っ」


高嶺悠月の被っていたプリンスの仮面が、メリメリと音を立てて崩れ落ちていく。


朝から見ていたプリンスと、重ならない。

あの笑顔の欠片すら、今はもう形を成していない。


「なんで俺が本性隠してること知ってるんだよ。
朝、言ってたよな?
俺のことを胡散臭いって」


あのときの会話、聞かれてたんだ……。


高嶺を初めて見た今朝から、胡散臭さを感じていた。


だからあたしは今、冷静にこの状況を受け入れつつある。


やっぱり、プリンスなんて仮面だったんだ……。

< 15 / 409 >

この作品をシェア

pagetop