【完】素直じゃないね。
やがて高嶺がゆっくりと顔を上げた。
その表情は、見ればわかるほど不機嫌オーラMAXで。
キラキラしていた瞳は、今はもう明かりを灯していない。
煩わしい虫ケラでも見るような目で、あたしを視界に捉えている。
高嶺が、再び口を開いた。
「お前さぁ、なんで騙されないわけ?」
「……っ」
高嶺悠月の被っていたプリンスの仮面が、メリメリと音を立てて崩れ落ちていく。
朝から見ていたプリンスと、重ならない。
あの笑顔の欠片すら、今はもう形を成していない。
「なんで俺が本性隠してること知ってるんだよ。
朝、言ってたよな?
俺のことを胡散臭いって」
あのときの会話、聞かれてたんだ……。
高嶺を初めて見た今朝から、胡散臭さを感じていた。
だからあたしは今、冷静にこの状況を受け入れつつある。
やっぱり、プリンスなんて仮面だったんだ……。