【完】素直じゃないね。
そして、上体を倒して顔を近づけてくる。
「ねぇ、すごい気になるんだけど。
先輩に、教えてくんない?」
見たことないほど真剣な瞳に、ドキドキと心臓がうるさくなって。
「……っ」
動けない。
それなのに充樹先輩は、容赦無く近づいてくる。
思わず息をのんだ、その時。
「こいつになんか用すか」
空気を破るようにして聞こえてきた声と共に、あたしの右手首が突然横から握られた。
「……高、嶺っ」
あたしの手首を掴んだのは、高嶺だった。
高嶺はあたしには一瞬も視線を向けず、まっすぐ充樹先輩だけを見据える。
「こいつに用なら俺が聞くんで、あんまり近づかないでもらえますか?」
高嶺らしくない、荒々しさをはらんだ声。