【完】素直じゃないね。
すると、呆気にとられたように高嶺を見つめていた充樹先輩が、上体を起こし目をつと眇めた。
「君は? つっちゃんのなに?」
「なんであんたに言わなきゃいけねぇんだよ」
なぜか一触即発の雰囲気。
というか、まずい。
高嶺のプリンスの仮面が完全に剥がれている。
あたしが男嫌いだから、絡まれてると思って助けてくれたのだろう。
でもそれは誤解だ。
放課後になったばかりで、廊下や教室にはまだ生徒がいるのに、こんなことで高嶺の本性がまわりにバレてしまったら……。
あたしは慌てて高嶺を止める。
「違うの、高嶺。
この人は、充樹先輩は、あたしの男嫌い知ってるの」
「は?」
「あたしの男嫌い治そうとしてくれてるんだよ。
だから大丈夫なの」
高嶺が驚いたように、弁明するあたしを見つめる。
やがて不満そうに目を伏せると。
「そうかよ」
そう呟いて、あたしの手首を掴んでいた手をほどいた。
「高嶺……?」