【完】素直じゃないね。
この男の本性は、今目の前の姿に他ならない。
あたしはぐっと拳を握り、伏し目がちに固い声を放った。
「見てたらわかる。
笑顔、無理してるって感じで」
再び舌打ちをする高嶺。
みんな騙されてるから、勘違いかと思った。
でも、今確証を得た。
「まさか、こんな裏の顔を持ってたなんてね。
あんたの素顔、みんなにバラすから!」
こんな本性、みんなが知ったら、ちやほやされるのも終わり。
こっちはキスまでされたんだから。
さっきのキスと甘い言葉は、口封じだったというわけだ。
あたしが、高嶺の虜にでもなって、その仮面に騙されるように。
胡散臭いなんて、もう二度と思わないように。
そんな理由で大切なファーストキスを奪われて、黙っていられるはずがない。