【完】素直じゃないね。
住宅街だったこともあり、それから俺たちは近くの公園に移動した。
「はい。美織はココアで良かったよね」
「ありがとう」
自販機で買ってきたココアをベンチに座っている美織に渡し、俺もコーヒーの缶を開けた。
途端に、ほろ苦い香りが湯気と共に立ち込める。
少し遅れるようにして、美織が控えめに缶を開ける音が聞こえてきた。
「落ち着いた?」
「うん」
ココアの缶を握りしめ、美織が頷いた。
俺は、美織を見下ろすようにして静かに尋ねる。
「そういう夢、よく見るの?」
「うん、時々。
朝起きたらあなたがどこにもいなくて。
私は夢の中で必死にあなたを探すの……」
「そっか」
俺は少し上体を倒し、美織と目線の高さを合わせる。
「大丈夫だよ、美織。
俺は──」
言いかけたその時、コートのポケットの中でスマホが鳴った。