【完】素直じゃないね。
「美織さん……。
こんな時間に呼びだされたの?」
「……」
黙っていると、宙が拗ねたように目を伏せた。
「……日吉ちゃん、桜庭先輩と仲よさそうだったね」
なんで今、つかさの話が出てくるんだよ。
そう言いかけて、つと口を噤む。
桜庭先輩のことは知っていた。
女子がよく騒いでいたから。
どういう経緯で、そんな桜庭先輩とつかさが仲良くなったのかはわからない。
だけど、学校で話すふたりは親密そうに見えた。
「そうだな」
「高嶺は、これでいいのかよっ?」
突然、宙が声を張り上げた。
静まり返った夜道に、悲痛そうな宙の声が響き渡る。
「なにがだよ」
「日吉ちゃんだよ。
高嶺と日吉ちゃん、いい感じだったじゃん!
俺だって応援してたのに……」
言いながら、悔しそうに宙が拳を握りしめる。
「ねぇ、いいの?
あの先輩に日吉ちゃん取られちゃっても──」
「いいわけねぇだろ!」