【完】素直じゃないね。


大声に、宙が驚いたように押し黙った。


俺もこんな大声が出るとは思ってなかった。


感情的になった頭を冷やすようにひとつ息を吐いて、うつむく。


「……でも、どうにもできないんだよ」


夏祭りの日、思わずあいつを抱きしめた。


あの日、自覚してしまった。自分の気持ちを。


だから距離を置いた。

どうにもならなくなる前に。


俺には、美織がいる。


美織を見捨てることは、できない。許されない。


美織をああしてしまったのは、俺だから。


「高嶺は、いつまでこうしてるんだよ」


いつまで、か。

そんなの、俺にだってわかんねぇよ。


「贖罪は、どこまでいったら終わるんだろうな」


「高嶺……」


あの日。

俺は美織から大切なものを奪った。


その罪は、多分一生消えない。







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