【完】素直じゃないね。
「気づいてないとでも思ったのかよ」
まだ、あのときの熱が唇に残ってる。
「ファーストキスだったのに、ばか……」
次の日。
教室の机に突っ伏し、あたしはだれにも聞こえないほどの小さな声でつぶやいた。
あのときは怒りでいっぱいだったけど、時間が経つにつれて、ショックが大きくなってくる。
ファーストキスはやっぱり、好きな人としたかった。
それを、あんな悪魔に奪われるなんて。
おまけに高嶺と目が合うと、いやでも昨日のことを意識せずにはいられなくなってしまった。
高嶺はというとキスのひとつやふたつなんでもないようで、今朝目が合ったときなんて、意地悪な笑みすら向けてくる余裕ぶり。
なのにあたしは、高嶺と目を合わせることもままならなくて。
なんか……負けたみたいで腹立つ。