【完】素直じゃないね。
恐る恐るそちらを見やると、案の定高嶺がこっちを見ていて。
相変わらずの地獄耳。
たくさんの女子に囲まれてるくせに、すうっと目を細めてこちらを睨んでくる。
目で、〝そいつに話したらどうなるか分かってるんだろうな〟と脅してくる。
まわりの女子たちは、目がすっかりハートマークになっちゃってるせいか、高嶺の異変にはまるで気づいていないようで。
昨日のこと言ったら乃亜にまで危険が及ぶと、一瞬で危険を察知したあたしは、乃亜に向かって慌ててぶんぶんと手を横に振った。
取り繕った笑顔付きで。
「ごめん、なんでもないっ!
いつも通り元気だよ!」
「ほんと? ならよかったぁ」
安堵してくれたのか、ほわほわっと頬を緩ませる乃亜。
うう。まさか、乃亜に嘘をつく日が来るなんて。
心が抉られる。