【完】素直じゃないね。
いろんな意味でHPを削られ、残りのHPも少なくなって迎えた休み時間。
「だれか、この教材を資料室まで運んでくれないか」
机に肘をつき、ぼーっとしていると、前の授業の先生が教卓の上のダンボールを2個叩きながらそう言った。
でも貴重な休み時間を潰されてしまうからか、先生から目をそらして、だれも声を上げない。
シーンと教室が静まりかえった時。
「俺、行きますよ」
静寂を破った、低くて甘い声。
声を上げたのは、高嶺だった。
「おお、高嶺。助かるよ。
でも……高嶺ひとりじゃなぁ」
労いの笑顔を浮かべたのも束の間、先生はダンボールを叩き、また困った表情を浮かべた。
そう、ダンボールはふたつ。
大きさもそれなりにあるから、高嶺ひとりじゃ運べない。