【完】素直じゃないね。
高嶺が運ぶということで、女子たちがざわめきだす。
「高嶺くんが行くなら、私が……」
「えー、私もーっ!」
教室のいたるところで次々に手が挙がり始めて。
だけど、そんな状況を知ってか知らずか、高嶺は先生の方を向いたまま、また口を開いた。
「あ、大丈夫です。
一緒に行ってくれるって言う子がいるんで」
そこで声が途切れて、なぜか教室が再び静かになったことに気づき、ぼーっとやり取りを聞き流していたあたしは反射的に顔をあげた。
すると、なぜかこちらを振り返っている高嶺と目が合った。
……ん? なんで高嶺、こっち見てるの?
しかも、なんでそんなに笑顔?
「行ってくれるよなー、日吉さん?」
有無を言わせぬ威圧感。
前言撤回します。
やっぱり目は、ちっとも笑ってない。