【完】素直じゃないね。
「え?」
思いがけない言葉に、反射的に顔を上げた。
好きでいる気持ちは自由、そう言ってくれた乃亜とは、正反対の意見だ。
好きでいるのをやめるなんて、できるのかな……。
戸惑っていると、そんなあたしの気持ちを読んだかのように、充樹先輩が答えを提示した。
「新しい恋を始めればいいんだよ」
「新しい、恋……?」
「高嶺くんのことを想ってる時間がもったいないよ。
次の恋なんて、すぐそこに落ちてるかもしれないんだから」
「……」
あたしは再び目を伏せ、膝の上のこぶしを握りしめた。
充樹先輩が言わんとすることは、よく理解できる。
ずっと、好きでいるわけにはいかないことはわかってる。
今のまま想っていても、なにも変わらない。
新しい恋、なんてそんな考えなかったけど。
少しずつ、前を向いていかなきゃいけないのかな……。
「充樹先輩」
「ん?」
あたしは顔を上げ、充樹先輩の目をまっすぐに見据えた。
「あたし、高嶺に告白しようと思う」