【完】素直じゃないね。
「え?」
不意打ちで呼ばれた名前に、ドキリと心臓が嫌な音を立てて反応する。
昔から、あたしは男っぽいこの名前がちょっとしたコンプレックスで。
小学校の頃、あたしの性格とが相まって、男子たちによく〝男っぽい〟ってからかわれていたから。
だから、乃亜以外にはあんまり呼ばれたくない。
「日吉でいいって」
「なんでだよ。 いいじゃん、つかさって名前。
俺好き」
「はっ……?」
「それに、女子の呼び方は下の名前で統一してねぇと、ごちゃごちゃする」
……はいはい。 あんたはそういうヤツでしたよね。
こんな女たらしに、一瞬でもドキッとしたあたしがばかみたい。
恨めしく隣を見ると、高嶺はさっきまでのあたしへの態度はどこへやら、すれ違う女子達にキャーキャー言われ、甘いスマイルを振り撒いてる。
「高嶺くーん♡」
「おはよ、まなちゃん」
この男、器用すぎる……。