【完】素直じゃないね。
「俺を朝陽だと思い込むくらいボロボロになったこの人を、救わなきゃいけないって思った。
守らなきゃいけないって。
兄貴を亡くした辛さは、俺が一番分かるから」
高嶺が、ふと顔を上げた。
自嘲気味で痛々しい笑顔を、そっと口元に浮かべて。
「だから、俺は兄貴の身代わりをやってるってこと」
「そん、な……」
〝身代わり〟
その言葉が、ずしんと重く心に響く。
「兄貴の代わりになれるように、大っ嫌いな勉強を始めた。
好かれるような振る舞いをするようになった」
明らかになっていく真実に、思わず言葉を失う。
それと同時に、すべてのパズルのピースがはまっていくような、そんな感じがした。
これが、すべての理由。
高嶺が美織さんと今の関係でいる理由も、仮面を被る理由も、テストで毎回首位を取って優等生でいる理由も。