【完】素直じゃないね。


「これは、美織に対する贖罪だ。
俺が、美織から最愛の人を奪ったんだから」


あまりにも自分を痛めつける、高嶺の言葉に。

……もう、我慢ができなかった。


苦しさが胸に押し寄せてきて、孤独な高嶺を冷たい空気に晒していたくなくて。

高嶺の前に立つあたしは手を伸ばし、ベンチに座る彼を抱き寄せていた。


「……っ、なにして……」


高嶺があたしの腕の中で驚きを見せる。


男子が怖いとか、そんなことはもう頭になかった。


気づいたら、腕が伸びていて。


「高嶺」


たった四文字を呼ぶのにさえ、声が掠れた。

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