【完】素直じゃないね。
「いいの? つかさちゃんの気持ちは……」
あたしは乃亜の肩に顔を埋めたまま頷いた。
だってね、美織さんを見捨てない、そんな優しい高嶺のことが好きだって思っちゃうんだよ。
そういう人だから、高嶺のことを好きになったんだよ──。
ぐすっぐすっと鼻をすすっていると、乃亜が背中をさすった。
「うん、うん」
そう言って、なにも訊かないで。
状況なんてまったくわからないはずなのに、乃亜は全部を受け止めたように、あたしが落ち着くまでそうしていてくれた。
乃亜、乃亜、苦しいよ。
高嶺が美織さんとキスしたのを見てしまったのを見てしまった時よりも、胸が苦しい。
大切な人が苦しいと、こっちまで苦しくなるんだね。
高嶺にとって、幸せってなんだろう。
高嶺と美織さんは、どうしたら幸せになれるんだろう。