【完】素直じゃないね。
結局なにもできないまま、昼休みを迎えた。
乃亜が茶道部の集まりに行ってしまったから、あたしはひとりで購買部にパンを買いに行くことにした。
教室を出て、廊下を歩き出す。
窓から覗く秋空を見上げれば、あたしの心情とは裏腹にすっきりと晴れ渡っていて。
はぁ、とため息をついた、その時。
「日吉ちゃん!」
突然、背後から名前を呼ばれた。
おもむろに振り向くと、なぜか必死な顔でこちらに向かって走ってくる宙くんの姿を見つけた。
「宙くん、どうしたの?」
あたしの前で立ち止まった宙くんが、体を屈めて膝に手をつき、荒い呼吸をしながら、あたしを見上げる。
端正な顔を、疲れで少し歪ませて。
「高嶺、どこにいるか知らないっ?」
不意打ちで突然出てきた高嶺の名前に反応するように、ドクンと心臓が揺れる。