【完】素直じゃないね。
再び廊下にだれもいなくなったところで、あたしはずっと引っかかっていたことを高嶺に訊いた。
「ねぇ。 そこまでして、なんで〝プリンス〟やってるの?」
「は?」
だって、コロコロ表情変えて疲れそう。
「そんなにキャーキャー言われたいの?
キャラ作らなくったって、その顔なら充分チヤホヤされるでしょ」
肩をすくめ、少し皮肉っぽく言うと。
「……お前には関係ねぇよ」
前を向いたまま、高嶺が一言言い放った。
まるでその話題をシャットアウトするかのように。
「え?」
高嶺を仰いだ一瞬、その瞳の奥に闇が見えた気がした。
〝入ってくるな〟
そう突き放された気がして。
たしかに言いすぎちゃった気はするけど、そんなに冷たく言うことなくない……?