【完】素直じゃないね。
宙くんが、微かに目を見開いた。
「知ってるの……?」
「昨日、高嶺から聞いた」
正直にそう答えると、宙くんが静かに目を伏せた。
「そっか。……実はね、今日、朝陽さんの命日なんだ」
「え?」
「だから、なんとなく胸騒ぎがして……」
「……っ」
『俺が中三のとき、交通事故で死んだ。
歩道を歩いてた俺に向かって突っ込んできた飲酒運転の車から俺を庇って、轢かれた』
ふと、高嶺の声が蘇る。
淡々とした語り口。
それなのに、罪悪感にまみれた声だった。
「高嶺、ああ見えて結構思い詰めるタイプだから……」
つぶやく宙くんの声が途切れるのを待たずに、あたしは声を上げていた。
「あたしも捜す……っ」
「えっ?」