【完】素直じゃないね。
高嶺が俯く。
「なんで、俺が生きてんだろうな。
あの時庇われることなく、俺が死んでたらよかった」
高嶺が弱々しい自嘲気味な笑みを口に乗せた。
不意に鼻の奥がツンと痛んで、視界に映る高嶺の表情がぼやける。
目の前にいる高嶺が、今どんな表情を浮かべているか分からなくなる。
「みんな思ってたよ、なんで死んだのが俺じゃなくて兄貴だったんだろうって。
俺も思う。
俺がいなければ、兄貴はあんな目に遭わずに済んだのに」
あくまでも冷静を装う高嶺の声音に、自暴自棄の傷が刻み込まれていく。
「だから死んだんだよ、俺は。二年前の今日に。
兄貴を演じていく。
俺が消えても、兄貴がいればいい。
求められるのは兄貴だから」
「──ばか!」