【完】素直じゃないね。


あたしが張り上げた声に、高嶺がはっとしたように顔を上げた。


「なんで、なんでそんなこと言うの……」


気づけば、あたしの顔は涙でぐしゃぐしゃだった。


もういいやって言うくせに、なんでそんなに悲しそうな顔するの?

なんで諦めようとするの?


『……俺が消えたら、嫌なんだ?
こんな俺でも?』


夏祭りの日、あたしにそう訊いた高嶺の言葉が頭の中で蘇る。


高嶺はあのとき、どんな気持ちであたしにそう訊いたのか。


「高嶺を助けた、朝陽さんの気持ちはどうなんのよ!」


「……っ」


高嶺が目を見開く。


あたしは朝陽さんに会ったことなんてないし、ましてや彼のことを知ってるわけじゃない。


でも、朝陽さんが、高嶺に苦しんでほしくて助けたんじゃないことはわかる。


弟を、高嶺を守りたいから、助けたはずなのに。

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