【完】素直じゃないね。
「……俺、すっげぇ間違えてきたかな」
目を伏せたまま、高嶺がぽつりとつぶやく。
「高嶺、間違わない人間なんていないよ。
みんないろんなとこで間違って、人を傷つけちゃったりしながら、それでも進むしかないの。
間違えたら、少しずつ修正していけばいいんだよ。
過去に戻ることも、今に居続けることもできないんだから」
過去を受け入れるのは、すごく難しいこと。
それが重く、つらいものであればあるほど余計に。
でも。
「高嶺になら、できるよ。
これからを生きていくことが」
あたしは信じてる。
そっと、高嶺の手の甲に自分の手を重ねた。
ずっと屋上にいて、冷たい風にさらされていたというのに、高嶺の手には温もりがあった。
生きてる。高嶺は、ちゃんと生きてる。