【完】素直じゃないね。
空を仰ぎ見れば、視界に広がるのは、雲ひとつなく澄み切った秋空。
俺の声は、空のどこまで届いているんだろう。
「──つかさがここに来るように、宙が仕向けたんだろ」
秋空に溶けるほど静かに声を放てば、
「バレちゃったか」
と宙が少し笑って、それからグラウンドに視線を向けたまま、ぽつりとトーンを下げて呟く。
「きっと、高嶺はここにいるんじゃないかなってわかってたからね。
日吉ちゃんなら、なにかを変えてくれると思ったんだ」
言いながら、フェンスを掴む宙の手に力がこもり、ガシャンと金属音が鳴る。
一瞬、しんと静まり返った後、突然宙が俺に向かって宙が頭を下げた。
「ごめんっ……」
「え?」
思いがけない宙の行動に、俺は思わず目を見張った。
「なんだよ、急に」
「……俺、ずっと高嶺が隣で苦しんでるのに、なにもしてやれなかった」
「宙……」
「二年前、高嶺が朝陽さんとして生きていくって、そう言った時も……」
後悔とやるせなさが入り混じる宙の声を耳にしながら、俺は二年前を思い出していた。